企業価値を最大化する管理会計の高度化とは
管理会計は、企業が経営管理を行う上で重要な役割を担っています。管理会計の高度化を図ることで、企業は財務状況を正しく認識し、投資の効果を最大限に高め企業価値の最大化を実現することができます。当記事では、管理会計の高度化に向けた要点について解説します。
管理会計の重要性と導入に向けた整理
会計とは、経済活動による収支を認識して記録し、ステークホルダー（利害関係者）に対して報告をするまでのプロセス全体を指した言葉です。そのうえで、会計は財務会計と管理会計の大きく2つに区分され、それぞれ目的に応じた処理方法の違いがあります。
財務会計はステークホルダーへ財務状況の実態を報告するための手段であり、管理会計は経営陣が業績や事業の成長をマネジメントするための手段です。すべての会社は財務会計を行うことが義務付けられていますが、管理会計は義務ではないため、会社によって最適なフレームや制度を構築することが求められます。
会社ごとに重要な指標や、経営戦略、重要度の高い経営資源は異なるため一概に「理想的な管理会計制度」は存在しないと言っていいでしょう。しかし、管理会計を経営に取り入れる際は制度導入によりどのような「メリット」を享受したいかをまず検討し、それに基づき制度のフレームを最適化させることが大切です。
管理会計制度導入によるメリット
管理会計の導入により期待されるメリットとしては下記のようなものが挙げられます。
①事業セグメント別の収益実態を把握できる
利益や損失、収益、経営資源の情報などを集約し、事業セグメント（自社の製品やサービス、部門）ごとに収集・分析することで、経営戦略に活かすことができます。
組織全体の数字では、どの事業、製品が売上を伸ばしているのか、どの部門の勢いが落ちているのかといったことが判断できません。一方、管理会計でセグメント情報を収集・分析すれば、今後経営資源を投下すべき事業や製品や撤退を検討すべき部門などを可視化することができます。企業価値の最大化および持続的成長を実現するには、経営資源の効果的な投下が不可欠であり、不採算の事業や部門は迅速に縮小することが求められます。そのための判断根拠を管理会計は可視化します。
②社員にも経営感覚を身に付けられる
企業が継続的に発展するにあたって、人材の成長は欠かせません。個々のスキルを伸ばすのはもちろん、経営感覚を身につけさせることで社員は予算やコストを意識するようになり、結果的に組織の発展に寄与します。管理会計の導入により、社員の経営感覚を磨くことが可能です。
部門ごとの財務状況を可視化して共有すれば、どこにどれだけの予算を費やしているのか、どれくらい無駄なコストが発生しているのかを社員は把握できます。現場で活躍する社員が予算やコストを意識すると、どのように無駄をなくせばよいのか、その予算で目標をクリアするために何をすべきなのかを考え始めるでしょう。その結果、無駄なコストの削減や利益の拡大につながります。また、目標をクリアできなくても、次回はどのように行動すべきかを考えるようになるため、社員の問題解決能力が磨かれます。
③PDCAサイクルがスムーズになる
PDCAサイクルを回すことにより、施策や業務が改善されます。ただ、とくに中小企業のなかには、PDCAサイクルをスムーズに回せない企業も少なくありません。PDCAサイクルをうまく回せない原因のひとつとして、目標が明確でないことが挙げられます。こういった場合、社員はどこへ向かって進めばよいのか分かりません。具体的に課題が見えてこないためモチベーションも高まらず、PDCAをうまく回せない事態に陥ってしまいます。
管理会計を導入すると経営状況を可視化でき、組織の現状も正確に把握することが可能です。率先して取り組むべきことが明らかになるため、それを目標として設定すれば、PDCAサイクルがスムーズに回り始めるでしょう。
管理会計導入時に気を付けるべきポイント
管理会計の導入時に気を付けるポイントは以下の通りです。
①目的の明確化
管理会計を導入する前に、導入によって何を達成したいのか、どのような情報が必要なのかといった点について明確にすることが重要です。それにより導入する管理会計システムの要件や導入の方法が変わります
②運用体制の準備
管理会計を導入することは、組織全体に影響を与えます。そのため、導入前に運用体制を組成し、トレーニングやコミュニケーションの強化を行うことが重要です。
③適切なシステムの選定
制度構築において管理会計システムを導入する際には、自社のニーズに合ったものを選定することが重要です。また、システムがスケーラブルであるか、拡張性があるか、セキュリティが確保されているかなど、技術的な側面を検討することも重要となります。
④データ品質の確保
管理会計は正確な情報を提供することが求められます。そのため、データの品質を確保するために、データ入力の方法や規則を詳細策定し、運用にかかわるメンバーにしっかりトレーニングを行うことが必要です。
⑤導入後の継続的な改善
管理会計の導入は、一度行ったら終わりではありません。導入後も継続的にシステムを改善することが必要です。そのためには、フィードバックの収集や定期的なレビューを行い、改善点を見つけ出すことが重要といえます。
以上のように、管理会計の導入には慎重な準備が必要です。計画的に取り組むことで、より効果的な制度導入・高度化が図られます。経営環境が不安定さを増す中、自社の戦略を明確にする管理会計の導入にぜひお取り組みください。
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